こんにちは、たま企画室です。今日は、私の大好きな【石造美術】についてお話ししようと思います。
以前のブログ『石造美術について』では、ざっくりと石造美術の定義を説明しましたが、今回は実際の例を紹介していきます。 記念すべき第1回目は奈良県奈良市の【西大寺奥ノ院五輪塔】です。石材業界の方で、この西大寺奥ノ院五輪塔を知らない方がいれば、はっきり言って、もぐりです(笑)。それほど有名な五輪塔です!
この五輪塔は、西大寺中興(ちゅうこう・・・衰退した組織や制度、文化などを再び活性化させ、復興・再建することを指します)を行った僧侶・叡尊のお墓として造立されました。高さはなんと3m36.8cmもあり、非常に巨大です。この五輪塔の形は、叡尊が率いた律宗の教えが全国に広がる過程で広まり、鎌倉時代以降、この形が五輪塔の基本的なデザインとなりました。
五輪塔の形式は、下から地輪(ちりん)、水輪(すいりん)、火輪(かりん)、風輪(ふうりん)、空輪(くうりん)の順で構成されています。西大寺奥ノ院五輪塔には、五輪塔本体以外に台座と基壇が設けられていますが、これらは塔として必ずしも必要なものではなく、塔を荘厳(しょうごん・・・仏像や堂宇、石塔などを美しく厳かに飾りつけること)するために設けられたものです。
台座には美しい繰形座(くりかたざ)が用いられ、繰形座は優美な曲線が特徴です。基壇は壇上積式基壇(だんじょうづみしききだん)として構築されています。この繰形座と壇上積式基壇が加わることで、五輪塔全体の安定感と威厳が一層引き立てられ、仏塔としての格式が高められています。
さらに、私の知る限り、この五輪塔に設けられた壇上積式基壇は全国最大規模(石塔に設けられた壇上積式基壇として)で、一辺の長さが約6m50cmあります。そのため、基壇だけでも見応えが十分にあります。(もし他に同規模の基壇がありましたらごめんなさい。ぜひご紹介いただければ幸いです。)
さて、今回は五輪塔の教義(仏塔思想)についても触れたかったのですが、何よりもまず、実際の画像をご覧いただきたいと思います!私が思う美しい五輪塔。何度拝観させていただいたか分かりませんが、見飽きることがなく、ただただ「美しい」という言葉しか浮かびません。
最後に、私の個人的な意見として、「石造美術」という造語についてちょっとだけお話しさせていただきます。私は「石造美術」という言葉が、石造物の美しさをわかりやすく表現していて、とても気に入っています。ただ、石造物のほとんどが信仰の対象(手を合わせる対象)であり、単なる美術品ではありません。ですので、拝観されるときは、マナーを守って心を込めて接していただければと思います。これらの石造物は、長い歴史を経て受け継がれてきた大切な文化財でもあり、私たちの心に深い影響を与える存在です。静かにその美しさを感じながら、尊重しながら拝観していただくことが、石造物への感謝の気持ちにもつながります。
お読みいただき、ありがとうございます。五輪塔の教義(仏塔思想)については、また改めてお話しできればと思っております。質問やご意見がございましたら、どうぞお気軽にコメントやお問い合わせいただければ幸いです。今後とも、たま企画室をどうぞよろしくお願いいたします。
叡尊 (真言律宗総本山 西大寺HP) http://saidaiji.or.jp/history/h02/
参考文献 狭川真一著 『西大寺奥ノ院五輪塔実測記』(元興寺文化財研究所 研究報告2002)